解決を運べINTERVIEW.02

すぐに壊れる。
繊細な荷物の、
あたりまえを壊せ。

石橋 賢嘉

営業職(セールスドライバー®)係長
2013年入社

石橋 賢嘉石橋 賢嘉

profile

学生時代にアルバイトしていた居酒屋で、配達に来る佐川急便のセールスドライバー®と顔見知りに。「佐川急便が来なければ店が開けない」という気づきから、世の中にとっての物流の大切さを実感し、入社先として志望。知名度の高さや、福利厚生の手厚さも後押しになった。

1%しかない。1%もある。

「月に30個くらいかなあ。届くまでに壊れるんですよね」。歯科技工所で見せていただいたのは、ワックスでできた「歯」でした。入れ歯やインプラントは、歯科用のワックスでできた型をもとに製作されます。その歯科技工所では月に最大5,000個もの型を作り、各地の歯科医院へ発送していました。残念ながら、それを任されていたのは同業他社。けれど佐川急便にもきっと、お手伝いできることがあるはずだ。そのヒントをつかむため、時間をかけてようやくセッティングできた商談の場。そこで打ち明けられた悩みでした。自由に型を取れることと、あとから溶かせること。その条件を満たした歯科用ワックスは、もともと壊れやすい素材です。5,000個のうちの30個が壊れたとしても、全体のわずか1%以下。決して悪い数字ではありません。歯科技工所としても「そもそも壊れてしまうもの。ある程度はしょうがない」と捉えていたようです。それでも僕は思いました。「なんとかしたい」。壊れた型が届く。そのせいで、「噛む」という日常生活をあたりまえに送れない方がいる。壊したのが物流会社だとしても、歯科技工所や、歯科医院に不信感を抱く方もいるでしょう。それが5,000人のうちの30人だったとしても、いや、たった1人であっても、物流の工夫で解決できるのなら力を尽くしたい。

指輪を包むように。

ていねいに運んだならどうだろう。すぐに無意味だとわかりました。ワックスのもろさは想像以上。ほんの数センチ、滑り落ちただけで割れてしまうことさえ珍しくない。それなら、と注目したのは梱包でした。実際の梱包資材を見せていただくと、ごくふつうの段ボール箱。これでは荷物の繊細さを受け止めきれない。もっとほかにないだろうか。しっかりと中身を固定でき、それでいて、型が変形するほどの力を集中させずにすむ梱包方法が。上司や先輩、グループ会社。さまざまな意見を仰ぎました。その中にこんなアイデアがありました。「指輪のケースみたいに、クッション性の高い素材で内側が満たされた箱なら何とかなるかもしれない」。それだ!「これを使ってみてください。破損を抑えられるはずです」。探し出してきた梱包材は、みごと歯科技工所に採用されました。それだけではありません。「佐川急便さんに発送をお願いしてみようと思う」。待ちに待った一言です。ただし、条件付き。「まずは一週間。すでに取引のある他社と並行して運んでください。それで問題がなければ、佐川さんに切り替えます」。つまりは佐川急便の力を見定めるための、トライアルとしての一週間。僕が奮い立ったことは言うまでもありません。

嵐の一週間。

その一週間、僕は携帯を肌身離さず過ごしました。「伝票の出力ってどうやるんでしたっけ」「機械の使い方、これで合ってますか」。歯科技工所からひっきりなしに寄せられる、そんな問い合わせにすぐさま対応するために。出荷を請け負うには、お客さま側に佐川急便のシステムを新たに導入いただくことが不可欠です。けれど、不慣れなものにはどうしてもトラブルが付いてくる。カスタマーサービス課のスタッフに問い合わせていただくという手もあります。けれど僕は、できるかぎりの責任を自分自身で果たそうと決めていました。まるで嵐のような一週間。けれど荷物にとってはきっと、これまでになく穏やかな一週間だったはずです。破損ゼロ。その結果も後押しになり、歯科技工所のすべての発送は、佐川急便に託していただけることになりました。月に最大5,000個の発送という大口契約は、社内での高い評価にもつながりました。全国で年に数人だけが受賞できる「業績優秀賞」にも選ばれることができました。うれしかった。けれど、歯科技工所の、そして、その先にいる歯科医院や患者さんの悩みを解決できたこと。それを超えるうれしさはない。そう思います。

フタを開けるまで、わからないこと。

その荷物が何なのか、開けてみなければ正確にはわかりません。同じように、フタをされたままの「重荷」が、お客さまにはまだまだある。そう感じています。ただ荷物を運ぶだけならば、お客さまと僕たちが接する時間はほんのわずかです。交わす言葉も、二言三言ですんでしまう。そこに機会をつくれるか。歯科技工所の課題が、話し合うことであらわになったように、悩みを引き出し、解決策を示せるか。そこにこそ、佐川急便の存在意義があると思います。この件では、たくさんの人の知見を借りました。梱包材について。システム導入について。僕の中にはなかった答えへと、周囲のみんなが導いてくれました。心強い発見でした。佐川急便には、答えを出す力がある。だからこそ臆することなく、お客さまの抱える課題に立ち向かうことができる。世の中に残されている、物流課題の数。それは、佐川急便にできることの数。そう信じて、自分の中にも力を蓄えていこうと思います。

※職種は2020年3月31日現在のものです。