働き手不足を解消する業界初「AI搭載荷積みロボット導入」への挑戦

2024.05.23
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「物流2024年問題」とは、労働改革の波が押し寄せる中、2024年4月1日を境にドライバーの年間残業時間に制限が設けられることにより、業界全体が直面する切迫した課題のことです。一方で「2030年問題」は、日本の人口構造の変化が引き起こす労働力の減少という未曾有の危機を指します。この問題は、物流業界においても深刻であり、2030年までには輸送能力が約34%も不足するという試算が示されています。これは、単に数字の問題ではなく、社会基盤とも言える物流網が揺らぐことを意味しており、その影響は計り知れません。
これらの問題に立ち向かうためには、技術革新による業務の効率化と省人化を推進することが急務です。物流業界は日本経済を支える社会インフラとして、これらの挑戦にどう応えるか、重要な局面を迎えています。

  • 業界初
    国内の物流業界における人手作業の代替として、個々の荷物をトラックの庫内の最適な位置に積み込めるAI搭載の荷積みロボットの開発について。2023年12月14日当時、佐川急便調べ。
  • 出典
    内閣官房「物流革新緊急パッケージ」より
    https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/dai3/siryou.pdf

佐川急便と、米国のユニコーン企業でAIロボティクスソフトウェアの開発等を行うDexterity, Inc.(以下「Dexterity」)、SGホールディングス株式会社、住友商事株式会社は、今後の輸送力不足に対応する取り組みの一環として、「AI搭載の荷積みロボット」の実証実験を行う共同プロジェクトを2023年12月に発足しました。1年間の実証実験を行い、早期の実用化を目指しています。
現在、Dexterityの米国施設にて、佐川急便が求める輸送品質と人手作業の代替として十分な機能が果せるかを確認すべく実証実験を行っています。今後新設される佐川急便の中継センターなどへの導入を検討する予定です。

担当責任者の声

輸送品質を維持した荷積みロボットの実現に挑戦したい

私たちが取り組んでいるのは、ただのロボット開発ではありません。国内で初めて、トラック庫内で荷積み作業に最適なAI搭載ロボットを開発する試みに挑んでいます。米国の物流業界で実績を積んだDexterityの技術を駆使し、アメリカでの実証実験を通じて私たちが追求する輸送品質の高みを目指しています。また、私たちの荷積み作業は、ただの単純作業ではなく、荷物のサイズや形状、重さはもちろん、送り状の細かな記載内容や梱包資材の状態まで、作業者が瞬時に判断し、適切に扱う経験と技術が求められます。例えば、小さな梱包でもウォーターサーバーの水タンクであれば、その重さを考慮して下に積む必要がありますし、クリスマスシーズンの贈り物であれば、壊れやすいと感じたら細心の注意を払って扱います。こうした熟練の作業者だけが持つ経験とノウハウを、AI搭載ロボットに託し、新たな挑戦に取り組んでいます。効率化や省人化を目指すとともに、持続可能な物流を維持するためにも大きな一歩だと考えています。

渡部 誠一:東京本社 輸送ネットワーク部 部長
※取材当時