早春の森はどんな気持ち?「高尾100年の森」を感じに出かけよう!
2022年 春
ぽかぽか陽気とふるえる寒さが行ったり来たりの早春。街中では桜が開花し始めたというのに、「高尾100年の森」ではうっすらと雪がつもりました!それでも森の生き物たちは、目前に迫った春本番を待ちきれない様子。そんな早春の森には今、どんな気持ちがあふれているのでしょう。
早春の森の気持ちをあなた自身が確かめに、「高尾100年の森」へ出かけてみませんか。
自分で語ろう森の気持ち「アブラチャンの花」
私は高尾100年の森の精。四季折々の森の生き物たちの姿を通して、森の気持ちをお届けするレポーターだ。
森の木々が芽吹く前の早春、黄色の飾り花のように枝にたくさんの花を付けた木がある。アブラチャンだ。鳥になった気分で、森の中のどこにアブラチャンの花があるか、探してみよう。沢沿いや谷あいのサラサラと水が流れる明るい場所で、たくさん咲いていると思う。そんな沢沿いのアブラチャンの足元には、明るい森を好むニリンソウの白い花が一緒に咲いている。どうやら高尾100年の森の春は、沢沿いから始まるらしい。
次は虫になった気分で、アブラチャンの花にぐっと近づいてみてほしい。淡い透明感のある黄色い花びらは、まるで黄色の蝋細工かコンペイトウのようだ。時々小さなアブが花にやってきている。甘いお菓子のようにも見えるアブラチャンの花は、長い冬を超えた虫たちにとって、森が準備したご馳走なのだろう。
アブラチャンの花が咲き終わる頃、森の木々たちが葉を開きはじめる。彩りの少ない早春の森を染める黄色い花は、「いまから春が始まるよ。さあ起きて!」という森の気持ちを伝えているのかもしれないね。
森の中を得意に飛ぶわけは?「果実を求めて飛ぶヒヨドリ」
森の中を歩いていると、突然、けたたましい声で鳴きながら、アオキの枝の中に1羽の灰色の鳥が飛び込んできた。口笛を吹くような声と、空を波打つような飛び方。きっとヒヨドリにちがいない。
飛び込んだ先は、赤い果実をつけたアオキの木。このアオキの実は、鳥たちにとってはありがたい存在なのだ。冬の終わりになってから赤く熟すので、食べ物が少なくなるこの時期、ヒヨドリはよくアオキを訪れて実をつつく。
そんなアオキの果実の表面に、線状のへこみを見つけた。じつはこれ、ヒヨドリのはみ跡。ヒヨドリは森の中を飛び回り、アオキの果実の熟し具合を確かめる。はみ跡が残されているということは、まだ食べられない!と判断したのだろう。
熟すとヒヨドリに食べられてしまうアオキの実だが、種子は丸のみされて運ばれ、フンとなって他の場所に落とす。ふと周りを見渡してみると、この森はアオキが多い。この高尾100の森で暮らすヒヨドリたちの食欲が、ここまでアオキを拡げたのかもしれない。
管理でよみがえる森の動植物たち
藪を切り開いてから、1年が過ぎようとしている刈り払い跡地。春本番を迎える前ですが、どんな動植物が見られるでしょうか。
刈り払い跡地で、ぽつぽつと青紫色の花を咲かせているのはアオイスミレ。水戸黄門でおなじみの「葵の御紋」のモチーフとなった「フタバアオイ」に似た葉をつける、早咲きのスミレです。タチツボスミレも1株だけ花をつけていました。他にも、昨夏から芽生えが見つかっているミツバツチグリやキジムシロ、オニタビラコなど、明るい場所でしか見られない草花たちの芽生えが、土から顔をのぞかせていました。
落ち葉や枯草が広がるところで一見、何もいないように見えますが、しばらく見ていると、ちょこちょこと何かが動き回っています。ウヅキコモリグモです。網を張らず地面を徘徊する狩猟性のクモで、草原や林縁で地面にいる小さな昆虫を捕らえて暮らします。「ウヅキ」とは昔の暦で「4月(卯月)」のこと。まさに早一番に現れるクモです。
藪だった頃には見られなかった動植物が増え始めた刈り払い跡地。今年はどんな生き物が、メンバーに加わるのでしょうか。楽しみです!