今年の夏は森遊び!自然とのつながりを深めよう

森のお便り

2020年 夏

梅雨が終わって一斉に始まるセミの合唱を聞くと、ワクワクしてくる人も多いのではないでしょうか。セミの鳴き声はオスがメスに「自分はここにいるよ」と知らせるためのもの。ひょっとしたら、私たちも知らず知らずにオスたちの鳴き声にひかれているのかもしれません。

人とのつながりを深めにくいこの夏。視点を変えて、森で自然とのつながりを深めてみませんか。

森の香り図鑑~夏~

食欲の落ちる夏。香りを加え、風味を増してくれるシソやネギ、ワサビといった薬味は、とてもありがたい存在です。今日は、葉に香りを持つ植物を森で探してみましょう。

木漏れ日を浴びてかわいらしい丸い葉をつけているのはマツカゼソウ。ミカンの仲間ですが、さわやかな柑橘系というよりややクセがある香りです。次に見つけたのはクサギです。葉を軽くこするだけで、どことなくピーナツバターのような独特の香りが漂ってきます。花を咲かせて木に絡みついているのはヘクソカズラです。名前からしてとても臭そうですが、葉をちぎると確かにクサい!英語でもSkunk vine(スカンクのツル)と呼ばれています。

ところでなぜ植物は香りを持つのでしょうか?花は虫を呼び寄せるために香りを使いますが、葉の香りはこれとは逆。大事な葉を虫に食べられないよう、虫の嫌いな香りを葉の中に蓄えているのです。香りをさまざまな目的で使う、植物たちの生き残りの知恵には驚かされます。

マツカゼソウ
クサギ
ヘクソカズラ

森の落とし物~セミの抜け殻~

道沿いのアオキの葉の裏に、何かがくっついています。近寄って裏側をのぞくと、セミの抜け殻です!せっかくなので歩きながら集めてみると、木の葉の裏、枝先、草の葉、広場の柱など、いろいろな場所で35個の抜け殻を発見しました。

抜け殻はみんな同じように見えますが、並べてみると少しずつ違いがあることに気がつきます。一回り小さい抜け殻は、「カナカナ」と鳴くヒグラシのもの。大きい抜け殻はどれもそっくりですが、ミンミンゼミとアブラゼミの2種が混じっています。見分けのポイントは顔の前に突き出た触角。虫眼鏡でチェックして、触角が太い、毛が多い、根元から3番目の節が長い、などの特徴があればアブラゼミです。

今日の収穫は、ヒグラシが27個で一番多く、アブラゼミが6個、ミンミンゼミが2個という結果でした。ヒグラシは東京23区のように自然の森が少ないエリアでは数が減っている種類。ヒグラシの抜け殻は、森が健康を保っている証拠でもあるのです。

セミの抜け殻
幼虫、幼虫アップ

土から出てきた幼虫。触角が太く、毛が多く、根元から3番目の節が長いアブラゼミの幼虫。

管理でよみがえる森の動植物たち「木の芽生え」編

赤ちゃんを前にすると、「目元はお母さん似かな」「鼻は誰だろうね」など、ついつい親と似たところを探して、みんなで楽しむことがありませんか。自然観察でも同じようなことがあります。芽生えたばかりの植物の観察です。

間伐によって手入れされたエリアで、実生(みしょう:芽生えのこと)を探してみましょう。まずは、細長い葉が左右にスッと伸びた実生を発見。これはカラスザンショウです。大きくなれば細長い葉の枚数が今よりも増えて、まるで鳥の羽のような形になって、枝には鋭いトゲも生えてきます。次に見つけた実生は、若葉にほんのり赤みがかった毛を密生させています。これはアカメガシワ。大きくなると、毛の赤みがまして鮮やかな「赤芽」をつけるようになります。他にも、ヌルデやクサギ、クマノミズキなど、さまざまな実生をみつけることができました。

こうした実生は、常緑樹が茂る暗い森ではなかなか見つかりません。芽生えるために、林内に陽が差し込むことが必要だからです。間伐など森の手入れをすることは、森の若返りを手助けすることになるのですね。

カラスザンショウの実生
カラスザンショウ
アカメガシワの実生
アカメガシワ