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【秋】生きものの工夫にあふれる秋の森

少しずつ寒さが増してきた秋の高尾の森では、動物や植物たちが生き残りをかけ、また子孫を多く残すために、さまざまな工夫をくり広げています。

森の木々が赤色やむらさき色に果実を染めるのは、鳥にタネを運んでもらうためのアピールです。
山道わきで見つけたタヌキのフンにはカキやギンナンの皮やタネが混ざり、栄養豊富な果実を選んで食べて冬に備えるタヌキの姿が目にうかんできます。

生きものたちのそんな工夫を見つけに、秋の森へ出かけてみましょう。

細長い実をさわったら、とつぜんはじけちゃった!

森の中で小さなキュウリのような実を見つけたので、そっとさわったとたん・・・「パチッ!」と弾けてとんでしまいました。
いったい何が起きたのでしょうか?

実をつけていたのはツリフネソウ。この実は何枚かの細長い皮が張り合わさってできているのですが、それぞれの皮はクルクルとうずまきのように丸まろうとする性質があります。
果実が未熟なうちは皮がおたがいにしっかりとくっついていますが、熟してくると皮の間のつぎ目をくっつける力が弱まり、丸まろうとする力に負けて突然パチンと弾けるのです。

ツリフネソウの実は何のためにはじけるのでしょうか?
実がはじける様子をじっくり見ると、その理由がわかると思います。ヒントは「タネがどうなったか」です。実際に弾ける様子の動画をよく見て考えてみてください。
(答えはページの最後にあります。)

葉っぱの上に何か乗っているよ。鳥のフンかな?

道ばたのアオキの葉の上に、白黒のかたまりがくっついているのを見つけました。
鳥のフンかな?と思って近づくと、ササっと動いて葉の裏にかくれてしまいました。葉をめくってよく見てみると、白黒の体からしょっ角やあしが何本も生えています。
鳥のフンのようなものの正体は、アカスジキンカメムシというカメムシの幼虫でした。

このカメムシの成虫は緑色に光る体に赤い筋が入り、とてもきれいな姿をしています。
それなのに幼虫はなぜこんな変な姿をしているのでしょうか?
その理由は鳥のフンとまちがえたことにも関係があるようです。

みなさんは「カメムシはくさい」というイメージを持っていると思いますが、アカスジキンカメムシはにおいをほとんど出しません。
このカメムシはにおいを持たないかわりに、体の色や模様をフンに似せることで鳥などのほ食者の目をだまし、つかまらないようにしているようです。
天敵に食べられない工夫にも色々あるのですね。

梅のような実がゴロゴロ転がっているよ。見たこともない実だなぁ。

谷あいの森を歩いていたら、ゴルフボールくらいの緑色の実が足元にゴロゴロと転がっているのを見つけました。
梅の実のようにも見えますが、いったい何の実でしょうか?
周りを見わたしてみると、半分に割れた実の中から見覚えのあるモノが顔を出しています。
その正体はクルミ(オニグルミ)でした。

脂肪(しぼう)がたっぷりとつまったクルミは動物たちにとってごちそうです。しかしこの脂肪はタネが芽生えるためにクルミがたくわえたもの。
簡単に食べられないようにクルミはかたいカラで中身を守っているため、ふつうの動物ではそのかたさにまったく歯が立ちません。
しかし、そんなかたいクルミを食べてしまう動物もいます。それはニホンリスです。
2016年秋のお便り」で紹介したように、リスはクルミの合わせ目を器用にかじって開けてしまうのです。

植物がかたいカラをつくれば、それを開けようと動物も工夫する。生き残りをかけた生きものたちの工夫が、クルミをめぐる関係から見えてきますね。

環境まめ知識

小さな「コケ」の大きな役割

コケはジメジメした場所に生えている印象がありますが、森の中を歩いていると、かわきやすい岩や樹木の上などにも意外と多くのコケが着いていることに気がつきます。
岩や樹木の上には土がないため水や栄養は限られています。そんな厳しい場所で、なぜコケは生きていけるのでしょうか?

コケは土の中に広がる根を持っていませんが、体の表面から水や栄養分を取り込むことができます。
また、雨が降らず水が少ない間はカラカラにかれたようになりますが、水をかけると水を吸収して元どおりに活動を始めます。
このように、コケはふつうの植物とはちがう性質を持つことで、条件の悪い場所でも生きていけるのです。

他の生きものにとって、コケはどんな存在なのでしょうか?
宇宙空間に放り出しても死なないと話題になったクマムシは、コケを住処として利用しています。この森にも住んでいるムカシヤンマやホタルなどは、産卵場所として水辺のコケを利用しています。
他の植物には条件の悪い場所をコケが利用し、そのコケを他の生きものたちが利用する。小さくて見過ごされがちなコケですが、より多くの動植物が暮らすゆたかな森をつくるために大切な役割を果たしているのですね。

  • ※ 答え:ツリフネソウの実がはじける理由
    動画をよく見ると、タネが勢いよくはじけ飛んでいくのが見えます。
    単純に実が開いて下にポトリと落ちるよりも、はじけ飛ぶことで遠くにタネを運ぶことができます。ツリフネソウは風や他の動物にたよらずとも、タネを遠くへ飛ばす工夫を身につけた植物なのです。