いろどりの山で生き物の営みを見つめよう

森のお便り

2016年 秋

競うように鳴いていたセミたちの声が止み、コオロギやスズムシの合唱が聞こえるこの季節。
深い緑におおわれていた山は、色にあふれた美しい秋の山へとよそおいを変えていきます。

紅や黄に色づいた森の木々、たわわに実った果実に集まる動物たち。いろどりがあふれる秋の山へ、生き物の営みを観察しに出かけましょう。

なぜ木の葉は落ちるとき、赤や黄色になるの?

秋になると多くの木々は葉を落とし、冬をこす準備をします。ただ、植物の葉には光合成に必要な葉緑体をはじめ、植物が必要とする栄養素がたくさんふくまれています。これをそのまま捨ててはもったいないですよね。

そこで植物は葉を落とす前に栄養素を回収しリサイクルしています。葉緑体も分解されるため、回収が進むにつれて葉の緑色がうすくなっていきます。
その代わり、回収されずに残った黄色い成分や、分解の途中にできる赤い成分が目立つようになります。回収がすべて終わるころにはこれらの成分も分解され、葉はかっ色(かれ葉色)になります。

秋をいろどる紅葉や黄葉は、植物のリサイクル活動の結果なのです(写真は色とりどりのヤマザクラの落ち葉)。

この実を食べたのはだれかな?

この時期、足元を見ながら森を歩くと、食べあとのついた木の実がたくさん転がっていることに気がつきます。

オニグルミの実をきれいに二つに割った犯人はニホンリス(写真左)。リスは実の合わせ目をかじって器用に二つに割って中を食べます。
一方、まん丸の穴が開いた食べあとはネズミのもの(写真右)。どれを見ても必ず合わせ目を真ん中にして穴を開けています。

山を少し登ると、食べ散らかした柿の実が一面に転がっていました。
実には歯形がくっきりと残り、ニホンザルの食べあとだとわかります。サルは美味しい部分だけかじりとって食べているようです。
高尾の森には小さな柿の木が何本も生えています。ひょっとしたらサルのフンに混ざっていた種から芽生えたのかもしれませんね。

サルが木の上で枝を揺らしてるよ。何をしているの?

飼い主さんに連れられて林道を散歩していた犬が何かを見つけて森の中にもう然と走りこんでいきました。その先にいたのはサルの群れです。
ワンワン!と地上でほえる犬に対し、何頭かのサルが犬の頭上に近づいて木の枝をバサバサッと大きくゆらしていました。大きな音を立てて威嚇(いかく)し、自分の力強さを主張しているようです。
「犬猿(けんえん)の仲」という言葉は本当なんですね。

犬がいなくなると、サルの群れはゆっくりと移動を始めました。最後に大きなオスのサルが来たと思ったら、枝の上から私たちをじっとにらみ、写真のように体の毛を逆立てて威嚇のポーズ。サルの迫力に人間もたじたじです。
外敵から子どもやメスを守るためにサルも必死なので、観察するときは遠くから静かに見てくださいね。

環境まめ知識 木を切って森を守る

高尾の森では、森を守るために木を切っています。これを聞いて「木を切ると森があれてしまうのでは?」と心配になった人もいるかもしれません。

しかし多くの生き物が住む健康な森をまもるためには、木を切ることもときには必要です。
特に人間が植えたスギやヒノキの林はとなりの木との間が狭いので枝を十分に広げられず、放っておくともやしのような細い木がぎっしり生えた林になってしまいます。
そうなると太陽の光が林の中に届かなくなり、地上の草や木は光不足で育ちません。草や木がないので雨が降ると土が流され、土砂くずれが起こることもあります。

こうした森にしないためには、1本1本の木が大きく成長できるように、また地上に光が十分に届くように、木を切ってあげることが必要なのです。