初冬の森の中、枯枝の山や陽だまりにいる生き物は?
2023年 冬

これから冬本番。高尾100年の森は木々の葉がすっかり落ち、生き物たちは冬支度に入ったようです。晴れた日に枯枝の山や陽だまりをのぞいてみましょう。鳴き声や蝶の姿に気づいたら、少しの間待ってみると、鳥や蝶たちがすぐ近くまで近づいてくるかもしれません。
動物が集う森の魅力スポット
冬の鳥を探そうと、森の中で耳をすましていると、「ジャッ、ジャッ」と太くて低い鳴き声がします。声がする方向にあるのは、間伐後に積まれた枯枝の山です。しばらくじっと待つことにしました。1羽の鳥が枯枝の間を隠れるように動き回り、でもすぐに隠れてしまい、なかなか姿を見せてくれません。ようやく姿を見せてくれたのはミソサザイ。全身の羽の色が枯れた枝のような茶色をした鳥です。声がなければ、鳥がいることにも気づけなかったでしょう。
「チャッチャッ」。今度はさっきの声とは違って、舌を打つような高い声。1羽の鳥が枯枝の山のすき間から外に飛び出したかと思うと、すぐに元のすき間に入ってしまいました。今度の鳴き声はウグイスのようです。
ミソサザイもウグイスも枯枝の山はちょうどよい隠れ家になっているのでしょう。森の中では、間伐した枝を積んでおくと、すき間の多い空間ができます。そこには越冬するクモや虫など、鳥の食べる餌もひそんでいます。ミソサザイやウグイスは、森の中に暮らしながらも地上で餌を探していることが多い鳥です。イタチやタヌキなどにも狙われることがあるので、地上にある枯れ枝の山に逃げ込むのが一番です。人間にとっては何でもない枯れ枝の山ですが、生き物にとってはとっても魅力的な場所なのですね。



五感で発見!生き物たちのなぜ?
~ゴツゴツするもの~
森を歩いていると、足元に小さな帽子のようなものがたくさん落ちていることに気づきます。この帽子は殻斗(かくと)と呼ばれ、ドングリにとってはかかせないものです。コナラのように大きなウロコ状になるものと、シラカシのようにリング状になるものがあります。帽子というには、かなりゴツゴツしています。なぜ、ドングリはこんなにゴツゴツした帽子をもっているのでしょう。じつはドングリは若いときに殻斗におおわれて虫から身を守っているのです。しかし、虫は殻斗を超えて侵入します。よく見ると穴があいているドングリもよく見つかります。この穴は、ドングリの中身を食べて成長し、幼虫が抜け出した穴のようです。例えばこのドングリに産卵する昆虫はシギゾウムシやハイイロチョッキリ。これらの虫たちは長くて強い口をもち、どんなにゴツゴツした殻斗にも穴をあけて産卵するので、ドングリにとっては危険な虫たちです。
虫に産卵されないようにゴツゴツした殻斗をドングリが発達させると、今度は虫たちが強い口を手に入れて殻斗の壁を打ち破ります。こんな進化のせめぎあいがずっと続いているのです。





管理でよみがえる森の動植物たち
間伐後、3年目の冬を迎えました。冬支度にそなえ、餌がまだある時期に、多くの生き物たちが腹ごしらえをしたり、越冬場所を探しはじめたりするころです。開けた樹冠から陽がさしこんできました。これを待っていたかのようにクモや蝶がやってきました。落ち葉の上ではコハナグモの幼体が現れ、小さな虫などの餌を探しはじめました。
陽だまりでは、いろいろなチョウが地面の上で翅を広げています。青紫色に輝いた翅をいっぱいに広げたムラサキシジミ、青灰色の紋があるウラギンシジミ、頭の部分が尖ったテングチョウたちです。蝶にとっては、ひなたぼっこにぴったりの場所になったようです。やがてこれから冬本番を迎えると、蝶たちは常緑樹の葉の裏などに止まり、春を待つことになります。陽だまりでは、アカネやサンショウの若い植物も枯れる前の最後の葉を広げ、光を浴びていました。
間伐した高尾100年の森には四季を通して、これまでに見られなかったいろいろな生き物たちが見られるようになりました。変化しつつある森。次の春には、どんな生き物たちがやってくるでしょうか。





