秋は足早。秋の森を楽しむなら今しかない!
2019年 秋
立冬が近づく10月下旬。高尾100年の森の木々はまだそれほど色づいていませんが、森の中では秋が深まってきています。バラエティに富んだキノコたちが出そろい、ドングリなどの木の実が道を埋め尽くすほど落ちていて、みのりのピークを迎えています。油断をしているとあっという間に冬が来てしまいそう。秋の森を楽しみに、さあ出かけましょう。
高尾100年の森で見つけた「ふわふわな生き物」
秋になり肌寒くなってくると、つい、ふわふわとした物に目が奪われがちです。そのせいか、秋の森でもふわふわな生き物が気になってしまいます。
ヤブムラサキの葉は短い白毛に密におおわれ、まるでベルベットのように滑らかで、くせになる肌触りです。ただ葉は冬になると落ちてしまいますので、この毛は寒さ対策ではなさそうです。では何のために毛が生えているのでしょう?これは、光合成をする大切な葉が虫に食べられるのを防ぐためといわれています。
一方、タネにふわふわの綿毛をつけている植物も見られます。タイアザミなどのアザミ類やキッコウハグマです。こちらの綿毛はタンポポと同じで、風にのせてふわふわとタネを遠くに飛ばすはたらきがあります。
形はふわふわしていても、しっかりとした役割を持っているのですね。
森の食材図鑑「クルミは森のごちそう」
高尾100年の森の谷沿いには、オニグルミの木がちらほらと生えています。木の下にはクルミの実がたくさん落ちていましたが、穴が開いていたり半分に割られていたり動物に食べられたものばかり。それも仕方ありません。栄養に富んだクルミは動物たちにとってもごちそうなのです。
ふだん私たちが食べるクルミはセイヨウグルミ。高尾の森に生えているオニグルミはその仲間ですが、タネの皮が厚くてとても硬く、実を取り出すのが一苦労です。でもその分、味は美味しいとか。そう聞いては、試食せずにはいられません。
動物たちに食べられていないクルミをなんとか見つけ出し、「森のクルミキャラメル」づくりに挑戦!お味と調理法が気になる方は、食レポ図鑑をご覧ください。
管理でよみがえる森の動植物たち「きのこ」編
この時期の森では、さまざまなキノコに出会います。倒れた木の幹を鮮やかな黄色で彩るのはコガネニカワタケです。キクラゲのように耳たぶのような形になります。
うす暗い沢沿いで出会ったのはベニチャワンタケモドキ。茶色い落ち葉の間からのぞく鮮やかな朱色がひときわ美しく、つい見とれてしまいます。
オオゴムタケは色こそ地味ですが、ボールを半分に割ったような形とゴムのような弾力が特徴的で、一目見たら忘れられません。
きのこたちは秋の訪れを知らせてくれるだけでなく、森の環境を教えてくれる存在でもあります。自然林のように倒れた木が残され落ち葉がたまっていれば、それを分解する「腐生菌」の仲間が増えます。
逆に落ち葉かきや下草刈りをして森がすっきりすると腐生菌が減り、周りの植物と栄養や水を分かち合う「共生菌」が増えてきます。
キノコは「木の子」に由来するというのが定説です。森の環境が変われば出てくるキノコも変わる、まさに森の木々の子どもたちですね。
枯れ木や落ち葉を腐らせるグループ(腐生菌)
植物と共生するグループ(共生菌)
【特殊】他の生物から栄養を奪うグループ(寄生菌)
郷土の文化と森の生き物たち「八王子城と蛇」編
低木のしげみに何かの気配を感じます。のぞいてみると、木登り上手のアオダイショウがかくれていました。ヘビは手も足もないのにどうして木に登れるのでしょう?じつは体をおおう鱗(うろこ)を地面や木にひっかけ、それを足場にして移動しています。だから垂直な木にも登れるのです。
「どうにもヘビは苦手で…」という人も多いですが、私たちの先祖はヘビを農耕や水の神として崇めていました。高尾100年の森のとなりには、戦国時代に関東の有力者だった北条氏の一族である北条氏照が築いた八王子城の跡があります。この北条氏の家紋は「三ツ鱗(みつうろこ)」と呼ばれ、神の使いであった蛇の鱗に因むといわれています。
郷土の人々の守り神。そう考えるとヘビを見る目も少しは変わってくるのではないでしょうか。