落ち葉を踏みしめて、秋の気配を感じよう

自分で語ろう森の気持ち「ホオノキの葉」

晴れた日の秋の森は心が落ち着きます。なぜなのか思いめぐらしてみました。やわらかな木漏れ日のせい？風と葉の織りなす、さわやかな音のせい？あるいは、黄色や赤色に色づいた木々の葉っぱのせい？理由はこれら森のすべてかもしれません。

森の中に風が吹いたと思ったら、葉っぱがさらさらと落ち始めていました。落ちた先を見ると、30cmほどもある大きな楕円形の葉がたくさんあります。ひときわ目立つ大きな枯葉、ホオノキの落ち葉です。落ち葉の先に灰色の樹肌があり、幹をたどって上を見上げてみました。ホオノキは枝分かれが少なく、灰色の幹をすらりと伸ばした高木です。その木が持つ大きな葉は互いに重ならず、今にもくるくる回りそうな車輪状になっています。葉っぱはまるで森の中の目印のようでした。

ホオノキは森の中では森の広い範囲で点々と生えていますが、ほかの木々の葉の落ちた森の中では、その太くて真っすぐな幹と車輪状の葉っぱを持つ姿で、より象徴的な木に見えました。それぞれのホオノキを囲むように、周りの木はさまざまな色を出しあって、森を彩っています。森の外では強い風が吹いても森の中では静かな風に変わっています。森の外では陽の光が強くても森の中では柔らかい光がそそいでいます。ホオノキをとおして秋の森の彩りと静けさと柔らかさを感じさせてくれました。

森の中を得意に飛ぶわけは？「木々の中を飛び回るヤマガラ」

ニーニーニー。ジャージャー。突然、森の中から鳥らしき鳴き声が聞こえてきました。この鼻にかかったような甘い声で鳴くのはヤマガラです。翼の色は灰色で、橙色のベストを着たような背中とお腹で森の中でとっても目立つ小鳥です。秋から冬にかけては、いつも数羽の群れをなしています。枯葉が風に舞うような身軽さで、いかにも楽しそうに鳴きながら枝から枝へ飛び回ったり、地面におりて何かを探したりしています。鳥の中でも活動家のヤマガラですが、なぜこんなにアクティブなのでしょう？

じつはヤマガラたちが樹間と地面を行ったりきたりするのは、遊んでいるのではありません。食べ物を一生懸命探しているのです。樹上では枝の根本に産み付けられたガの卵や木の枝に潜んでいるクモなどを探して食べ、地面では落ちているドングリやエゴノキの種子を探しているのです。

しかもヤマガラたちは冬に向けて保存食も準備しています。ドングリなどを見つけたらくわえて飛んでいき、木の根元や地面に埋め込ます。餌の少ない冬にそなえてため込むのです。これは貯食行動と呼ばれています。堅実に生きているんですね。

興味深いことに、ヤマガラは自分で貯めた木の種子のすべてを食べるのではなく、数パーセントは食べられることなく、埋められた場所から芽生えてくる種子もあるというのです。ヤマガラが運んで埋めた種子が芽生えて新たな木に育つというのも面白いですね。

管理でよみがえる森の動植物たち

木々が伐採されて2年がたち、現在、森林に隣接した管理地は明るい草地になっています。よく目立っているのは黄色い花のヤクシソウと白い花のシラヤマギク、それに赤紫色の花のノハラアザミ。いずれも森の中に生える植物の種類と違い、森に隣接した草地など日当たりのよいところに生える植物が見られるようになりました。

ノハラアザミの花には、いろいろな昆虫もやってきています。なかでも飛んでくる数が多かったのがホソヒラタアブ。ノハラアザミの花のあちこちで蜜を吸っている姿が見られました。また、草地の地面では、夏に見られたエンマコオロギやアオフキバッタの幼虫たちがすっかり成虫になっていました。森林管理で草地が維持されているので、草地を好む昆虫たちは、この場所で大きく育ったといえます。

伐採などの森林管理によって、芽生えてくる植物の種類と、花の蜜を好む昆虫や草地を好む昆虫たちが増え、生き物たちの多様性がだんだん高まりつつあるようです。