生き物あふれる新緑の森へ

森のお便り

2016年 春

ゴールデンウィークが近づき、森の中は春本番。あたたかな陽ざしをあびて木々は若葉をのばし、森はやさしい緑につつまれます。
木のこずえではキビタキやシジュウカラといった小鳥がさえずり、足元では花に訪れる虫たちの羽音が聞こえ、森はとてもにぎやかです。

生き物あふれる春の森へ、さあ出かけましょう。

花にとまったハチの足に何かついているよ?

春は多くの花がいっせいにさくので、虫たちは大いそがし。クサイチゴの白い花に飛んできたのはコマルハナバチです。まん丸い体に長い毛が生えて、まるで毛玉が飛んでいるようです。

ハチのあしをよく見てみると、うすい黄色のかたまりがくっついています。これは何だか知っていますか?
じつは花粉のかたまりです。ハチは花粉を運んで植物がタネをつける手助けをしますが、花粉をエサにすることもあります。花粉を食べるハチのあしには「花粉ポケット」があり、そこに花粉をためるのでかたまりのようになるのです。

「ハチは毒があって凶暴(きょうぼう)でこわい」と思うかもしれませんが、マルハナバチの仲間はおとなしく、むやみにさわらなければさすことはありません。

葉っぱを巻いている虫がいるよ?何をしているのかな?

谷沿いの道を歩くと、アブラチャンという根元から株立ちした木がたくさん生えています。その若葉の上で、自分より数倍大きな葉を器用に丸めているヒゲナガオトシブミを見つけました。

写真に写っている首の長い方がオス、短い方がメスで、葉っぱを巻いていたのはメスでした。なぜメスは葉を巻いているのでしょうか?
じつはオトシブミのメスは、くるくると巻いた葉の中に卵を産みつけ、卵からかえった幼虫はその葉を食べて育ち、中でさなぎになり、そして成虫になって出てきます。

ていねいに全身を使って巻いていくので、一枚の葉を巻くのに1時間くらいかかります。くるくると巻かれた葉は、オトシブミのお母さんの想いがつまったゆりかごなのです。

水たまりのオタマジャクシは何を食べているの?

わき水がたまった水たまりに群れているのは、ヤマアカガエルのオタマジャクシです。
ヤマアカガエルの親は、まだ寒い時期に一度冬みんからめざめ、卵を産んでからまた冬みんします。そのためヤマアカガエルのオタマジャクシは、他のカエルよりも早い時期から見ることができるのです。

「オタマジャクシはカエルの子」ということを知っている人は多いと思います。では、カエルは虫などを食べますが、オタマジャクシは何を食べているか知っていますか?
答えは、水中に生える藻(モ)や、落ち葉、動物の死がいなど、何でも食べる雑食性です。食べ物を好ききらいしていては、せまい水たまりで大きく成長することができないのかもしれませんね。

環境まめ知識 きれいな花と地味な花があるのはなぜ?

この時期、道を歩くといろいろな花が見つかります。きれいな花もあれば、中にはとても地味な花もあります。どうして花にはこうしたちがいがあるのでしょうか?

きれいな花を見ていると、ハチやチョウが蜜(みつ)を吸いに飛んできます。そのとき、花粉を体にくっつけて、そのまま他の花へと運んでくれます。虫が好きな色やかおりを使って、花は虫たちにアピールをしているようです。
一方、地味な花には虫は飛んで来ません。そのかわり風がふくと、けむりのような小さな花粉が大量に飛んでいく様子が見られます。花が何色であろうと風は同じようにふいてくれますので、花が地味でも問題なく花粉を飛ばすことができます。

きれいな花、地味な花には、それぞれちゃんと意味があるんですね。