夏の高尾100年の森~生き物大集結!~

森のお便り

2023年 夏

今年の夏は本当に暑い。森の中は街中よりも涼しいのですが、それでもムワッとした空気に包まれています。そんな「草いきれ」の森を歩いていると、ときどき甘酸っぱい香りが漂うことがあります。そんな香りに出会ったら、生き物探しの大チャンス!五感を使って、夏の高尾100年の森を楽しみませんか?

動物が集う森の魅力スポット

森の中に入ると、木々の間から風が吹きぬけてきました。うん?甘酸っぱい香りが…。どこから?あたりを見渡すと、樹液が出ているミズキの木を見つけました。木肌を見ると樹液があちこちから出ています。

あっ、カミキリを見つけました。樹液に来ていたのは、緑色に輝く、体長3cmほどのカミキリ、オオアオカミキリ。樹液をひたすらなめ続けていました。樹液とは、幹の傷口から出た、糖(とう)を含む甘酸っぱい液のこと。木から出た樹液はしだいに発酵し、森の中に甘酸っぱい香りが漂いはじめます。しばらく様子を見ていると、お腹をすかせた昆虫が香りに誘われ、樹液を出す木に集まりだしたようです。このミズキの樹液には、カナブンやムネアカオオアリ、ハチの仲間もやってきました。

樹液を囲んでにぎわう様子が昆虫たちの酒場のようであることから、こうしたスポットは「昆虫酒場」と呼ばれます。愉快なネーミングですね。ミズキは、根から吸い上げた水分の量が多く、木肌を傷つけると樹液が出やすい木です。オオアオカミキリはそのことを知っているのか、樹液が出そうな木を見つけてかじりにやってきたのでしょう。このミズキの昆虫酒場、最初につくったのはオオアオカミキリだったのですね。

夏の森で、わずかな餌を求めて、樹液に集まる虫たち。樹液は、昆虫たちにとって生きるための大切な魅力スポットといえそうです。

オオアオカミキリ
オオアオカミキリ
カナブン
カナブン
クロスズメバチ
クロスズメバチ
ムネアカオオアリとムモンアシナガバチ
ムネアカオオアリとムモンアシナガバチ

五感で発見!生き物たちのなぜ?
~ヌルヌルするもの~

森の中の切り株。てっぺんはコケでおおわれていました。ふと見ると、コケの上をカタツムリがはっています。ミスジマイマイです。コケの表面は乾いてかさかさしているのに、ミスジマイマイはすべるように進んでいます。なぜ、かさかさしたコケの表面に引っかからずに移動できるのでしょう?

しばらく雨も降らず、水でぬれていないのに、よく見ると体だけはヌルヌルして光っています。カタツムリの進んだ後を見ると、ヌルヌルしたラインがコケの上に残っていました。このヌルヌルはカタツムリの体の表面から出した粘液です。カタツムリは、この粘液があるおかげで、カサカサした表面でも体をすべらせて進むことができたのですね。

カタツムリは、この粘液を使って幹や垂れ下がった葉、細いツルでも、体全体が吸盤のようにぴったりと張り付いて落ちることなく、上にも下にも進むことができます。粘液は乾いた葉や土の上でも体を乾燥から守る働きをしてくれます。それに、自身の体が傷ついたときに粘液を出して傷を治したりすることもあるそうです。粘液を出すカタツムリは、まるで、森の中を自由に動く小さな忍者のようですね。

ミスジマイマイ
ミスジマイマイ
ミスジマジマイと後に残った粘液
ミスジマジマイと後に残った粘液

管理でよみがえる森の動植物たち

木々が伐採されて3年目の夏。斜面から谷に近いところまで、陽がよく入るようになったので、下草も一面によく生えるようになりました。さっそく見つけたミカドフキバッタ。翅(はね)が短くて行動範囲の狭いバッタでも、好物のフキやクズが多い管理地はお気に入りのようです。草の茎に止まっていたのは、すきとおった羽をもつ昆虫、ウスバカゲロウ。幼虫の名はアリジコク。名の通り、成虫もアリなどの小さな昆虫を食べるので、アリが多くすむ明るい林にやってきたようです。草の葉上にいたのはベッコウハゴロモ。陽がよく当たる林縁に生えるクズやヤマノイモの茎から汁を吸う昆虫です。でもとても臆病で、近づくと跳ねて草むらに逃げてしまいました。ひらひら飛び回るのは明るい林を好んでやってきたユウマダラエダシャク。白地に黒の模様は鳥の糞に擬態(ぎたい)して鳥やトカゲなどに食べられないようにしているといわれていますが、体は黄色く目立つので、鳥やトカゲにみつかりそうですね。一方、間伐されて明るくなった谷側では、新たにタマアジサイとマツカゼソウが生えていました。つぼみが丸い球のような低木のタマアジサイ。葉を手でもむとさわやかな柑橘系の香りがするマツカゼソウ。管理された森は斜面から谷まで、形や色、しぐさなど面白い生き物たちが出現するようになりました。秋にはどんな生き物が登場してくるでしょうか。

ミカドフキバッタ
ミカドフキバッタ
ウスバカゲロウ
ウスバカゲロウ
ベッコウハゴロモ
ベッコウハゴロモ
ユウマダラエダシャク
ユウマダラエダシャク
タマアジサイの花のつぼみ
タマアジサイの花のつぼみ
マツカゼソウ
マツカゼソウ