目で、鼻で、秋の森をまるごと楽しもう!

森のお便り

2020年 秋

今年は夏が長かったせいか、秋があっという間に過ぎていくように感じます。冬ものを出すタイミングがおくれ、「しまった~」と思った人も多いのではないでしょうか。

冬に向けて準備をするのは、森の生き物たちも同じです。木々の葉が色づきはじめた森で、かけこみで花をつける植物、産卵場所を探す虫などで、森の中は活気づいています。秋の森の楽しみは、紅葉だけじゃありませんよ!今日はどんな出会いがあるでしょうか。

管理でよみがえる森の動植物たち「秋の野菊」編

日本の秋を代表する花といえば、みなさんは何を思いうかべますか?ここ高尾100年の森では、さまざまな野菊たちが秋の森をいろどっています。

いかにも野菊という花をつけているのは、ノコンギクとシロヨメナ。じっくり見ても見分けられないくらい、そっくりな姿をしています。この仲間はアスター(Aster)と呼ばれ、「星」に由来する言葉なのだとか。たしかに純白やすこし青みがかった花びらがパッとひろがる様子は、草原に光りかがやく星をイメージさせます。

ノコンギク
シロヨメナ

シラヤマギクも同じ仲間ですが、花びらが少ないせいか、星というより線香花火のイメージ。林のなかで見ることが多いことも関係しているのかもしれません。

シラヤマギク

林の縁ではあざやかな黄色い野菊も咲いていました。アキノキリンソウはシラヤマギクに似た黄色い花を、茎に沿っていくつもつける野菊です。一方のヤクシソウは小さなタンポポのような花をつけます。まとまって咲くことも多いので、にぎやかな印象をうけます。

アキノキリンソウ
ヤクシソウ

シロヨメナやシラヤマギクは林の中でも見られますが、暗い林の中で見かけることはありません。ほかの野菊たちはより明るい林縁や草原に生育しているものがほとんどです。日本の秋の代表的な花である野菊を楽しむためにも、明るい環境をつくりだす森の手入れが欠かせません。

森の香り図鑑~秋~

森を周遊する道の入り口にカツラの木が植えられています。今はまだ小さい木ですが、やがて高尾100年の森のシンボルツリーとなるはずです。

カツラの下へ歩み寄ると、ハート形のかわいい葉がたくさん落ちています。みんなで落ち葉をひろい集め、そのにおいをかいでもらうと…「わっ、あま~い」という声が聞こえてきました。「なんのにおいに似ている?」とたずねてみると、「焼き菓子」という人、「キャラメル・べっこうアメ」という人、そして「みたらし団子・わたアメ」という人がいました。その人の好みが感じられる答えですね。

次に、黄色い落ち葉と茶色くなった落ち葉を別々にして、もう一度においをかいでもらうと、茶色い方は香りがだいぶ薄いようです。つまり、カツラの香りは葉が落ちてから茶色くなるまでの限定ということ。

みなさんも黄色いカツラの落ち葉をみかけたらチャンスです!甘いひと時を楽しんでみてはいかがでしょう。

カツラ黄葉

森の落とし物~ドングリ~

今年の秋も高尾100年の森では、コナラのドングリが大豊作。イノシシやネズミ類など森の動物たちにとっては、冬に備えて栄養をつけるまたとないチャンスです。しかし足のふみ場もないほど大量のドングリは、さすがの森の動物たちでも食べきれないのでしょう、翌春になるとコナラの木の下は小さな芽生えで埋めつくされます。

そう考えると森がコナラだらけになってしまいそうですが、周りを見わたしてみるとコナラは太い木ばかりなことに気がつきます。若い木は常緑樹のアラカシなどがほとんどで、コナラの若木は見当たりません。林床を埋めつくしていたたくさんの芽生えも、秋には半分以下になり、次の年にはほぼ全てが姿を消してしまいます。コナラだらけになるどころか、逆に少子化の時代をむかえているようです。

このままだと数十年後、コナラがいなくなり常緑樹の森に変わってしまうかもしれません。そこで大切になるのが、明るい林をつくるための伐採です。太くなった木を切ることで、芽生えやひこばえが若木へと成長し、新しい森の主役となって、100年後まで豊かな森が続いていくのです。

ドングリ落果
ドングリ芽生え
コナラ林