冬の森は、出会いの森 かくれた生き物たちを探そう

森のお便り

2018年 冬

冬の森で見つけたお宝
真ん中に輝くのは青く綺麗な「カケス」の羽

寒い日が続くと、どうしても部屋にこもりがち。「森にいっても生き物がいないし、わざわざでかけなくても」と思うかもしれません。ですが、冬こそ森を楽しむ大チャンス。ちょっとしたコツさえ知っていれば、じっとかくれて寒い冬をこす生き物たちの姿を見つけることができます。まさに森のお宝さがしです。運が良ければ、陽の光に青くキラキラと光るカケスの羽が落ちているかも!

引きこもっていてはもったいない!さあ、暖かい格好をして、冬の森へでかけましょう。

管理でよみがえる森の動植物たち「森で冬をこす虫たち」

春から秋にかけてあれほど見られた虫たちも、冬の間はほとんど姿を見せません。どこへいったのでしょう?高尾100年の森で、虫たちのかくれ家を探してみました。

まずは森の広場の材木置き場をチェックすると…柱の角にチョウセンカマキリの卵のうがありました!カマキリは厚いスポンジ状のカバーで大事な卵を包み、冬をこすようです。

次はエノキの根元の落ち葉をめくってみると…頭に2本の角を持ったチョウの幼虫、オオムラサキです!エノキの葉を食べて育つ幼虫は、冬の間は落ち葉にヒシっとしがみつき、落ち葉の布団のなかで春を待っています。

最後に、くちたコナラの切株を割って中をのぞくと…ぽっかりあいた空間にクサギカメムシの群れを発見!ここなら寒い風も当たらず、快適に冬をこせそうです。でも、どうやってこんな場所を見つけ、集まってきたのでしょうか。不思議ですね。

エノキなどいろいろな木が生え、くちた木が残る雑木林は、冬の間も虫にとって大切な住みかになっているようです。いろんな環境があるからこそ、四季を通じて生き物たちが快適に暮らせるんですね。

チョウセンカマキリ卵のう
日陰となる場所で冬をこす
オオムラサキ幼虫
エノキの落ち葉の上でお休み中
クサギカメムシ
コナラの切株で寒い風をしのぐ

森で出会える生き物たち「イノシシ」

高尾100年の森を歩くと、土がほり返された場所や、泥水がたまった水たまりを見かけました。これはイノシシがエサを探したり、泥浴びをしたりしたあとです。イノシシと言うと、単純とか頭はよくなさそう、といったイメージを持つかもしれません。でも、本当にそうなのでしょうか?

イノシシは雑食性で、森の中を歩き回りいろいろな食べ物を探して食べます。例えば、春は竹林でタケノコをほり、夏は沢沿いでサワガニを探し、秋は雑木林でドングリを食べるといった感じです。実はこれ、すごいことなんです。季節によって食べ物を変えるためには、いつどこにいけばどんなエサがあるか、ちゃんとわかっていなければなりません。つまり、イノシシたちは優れた記憶力や判断力を使って、次はどこへいって何を食べるか、計画的に行動しているのです。

今年は「亥(いのしし)年」。単に「猪突猛進(ちょとつもうしん)」するのではなく、イノシシをみならって計画的につき進む年にしたいものです。

イノシシのウリ坊
餌を探しているのかな?

八王子の文化と森の生き物たち「お正月」編

今年のお正月、どう過ごしましたか?門松を飾ったり、おせちを食べたりした人も多いと思いますが、何でそういうことをするのか、ご存知ですか?

たとえば門松は、お正月に家々を訪れる年神さまへの目印として、「神を待つ」と言う意味でマツを使うそうです。また、以前は家の中に年神さまをまつるため、山からクリの木を切りだして棚を作り、ウラジロやユズリハ、ダイダイなどの植物をそえ付ける地域もあります。おせち料理はもともと年神さまにお供えする料理だったそうですが、いっしょにいただくために特別な「祝い箸(はし)」が使われます。箸の両側が細くなり、片側は自分用、もう片側は神さま用ですので、料理の取り分けに反対側を使うのはNGです。祝い箸にはヤナギが使われますが、折れにくく、ゴロが良い(家内喜ぶ=「やなぎ」)からと言われます。八王子では、ハシノキと呼ばれるミツバウツギを森で取ってけずり、祝い箸を作る家もあったそうです。

私たちがなんとなく続けているお正月準備のうらには、地域の自然と神さまを大切にする昔の人たちの思いが刻まれているのですね。

ミツバウツギ花
八王子で祝い箸を作るときに使われた

動けない植物が冬を乗り切る工夫

虫や動物は動いて冬の寒さをしのぐ場所を探すことができますが、植物は動けません。森の植物はどうやって寒さ対策をしているのでしょう?

子どもの顔より大きな葉をつけるホオノキですが、分厚くかたいカバーにおおわれた冬芽の長さはつまようじほど。冬芽の中には、幼い葉とそれをおおうカバーがミルフィーユのように重なっています。コナラの冬芽もカバーで包まれていますが、こちらは一つ一つが小さく、かわら状に重なることで全体をおおっています。まるで重ね着をしているようですね。

一方、ムラサキシキブの冬芽にはかたいカバーがなく、幼い葉がむき出しになっています。これで寒くないのかと心配になりますが、表面にたくさんはえた長い毛が空気をたくわえ、セーターのような防寒着の役割を果たしています。

動けないからこそ、植物たちは寒い冬をのりこえるために、いろいろな工夫をこらしているのです。

分厚くかたいホオノキ冬芽
ホオノキ冬芽断面
一つ一つが小さくかわら状に重なるコナラ冬芽
面にたくさん長い毛があるムラサキシキブ冬芽