彩りあふれる春到来 森のめぐみを五感で楽しもう!

森のお便り

2019年 春

ニリンソウ

森と野鳥(メジロ、イカル、ウグイス)の鳴き声

学校や公園の桜が花の盛りを過ぎるころ、高尾100年の森は春本番を迎えます。陽が差し込む沢沿いの林に入るやいなや、純白の花を咲かせたニリンソウが私たちの目を楽しませてくれます。林道沿いは柔らかそうな淡い緑の新芽にあふれ、美味しそうなゼンマイやすぼめた傘のようなヤブレガサといった山菜もあちらこちらで顔を出しています。ふと気が付くと、さわやかな風に乗り、鳥たちの嬉しそうなさえずりが聞こえてきました。

私たちの五感をおおいに楽しませてくれる春の森。旬はあっという間に過ぎ去りますので、お見逃しなく!

高尾100年の森で見つけた「おしゃれな生き物」

ニホントカゲ幼体

暖かな日差しが降り注ぐ森の中で、何かがキラリと光りました。何だろう?と思い近づいてみると、ヒガシニホントカゲの子供がかくれていました。黒系×黄色のストライプの体に、メタリックブルーに輝く尾。派手すぎず地味すぎない、おしゃれな配色です。

なんでこんなカラーリングをしているのでしょう?青く光る尾は敵に見つかりやすそうで、心配になります。しかし、それこそがトカゲのねらいなのです。敵におそわれるとトカゲは尾を自分で切り離し、切れた尾がクネクネと動いて敵の注意を引きつけるすきに、本体はさっさと逃げてしまうのです。尾は切れてもまた生えてくるので、一安心。トカゲのおしゃれは、自分の命を守るという大切な役割をもっているのです。

小さなころはおしゃれなトカゲも、成長するにつれて地味な茶褐色に変わっていきます。トカゲの世界では、おしゃれは若者だけの特権のようです。

森の食材図鑑

高尾100年の森で採れた山菜

みずみずしい新芽を見ていると、つい、これは食べられるかな、と思ってしまいます。春の山菜といえば、ふきのとうやタラの芽などが代表格ですが、森には知られざる食材がまだまだあります。春の森のかくれた食材をここで紹介しましょう。

森にはいるやいなや、着物の重ね着のように左右に葉が折り重なったヤブカンゾウや、くるりと巻いた新芽が特徴的なゼンマイが、草地から顔を出していました。丸い葉に白い斑の入ったユキノシタや、葉の上に小さな花をつけたハナイカダの新芽は、少し暗いスギ林で見つかる食材です。広場周辺の明るい雑木林では、面白い形をしたヤブレガサの新芽、香りのよいサンショウの葉、さらにはミツバウツギやオカウコギなどの新芽も発見!先ほど紹介したニリンソウも食べられますが、採集をためらうくらいの可愛らしさです。2時間ほどの散策で、9種の食材を集めることができました。

ただし森の食材集めには注意も必要です。山菜に似た毒草があったりしますので、見分けに慣れていないうちは詳しい人と一緒に楽しんでくださいね。

管理でよみがえる森の動植物たち「スミレ」編

スミレは野に咲く花のイメージがありますが、じつは森の中でもスミレの仲間たちが花を咲かせています。高尾100年の森で、春のスミレ探しをしてみましょう

タチツボスミレは最もポピュラーな淡い紫色のスミレです。陽の当たる草原から日陰のスギ林まで幅広い環境で見られ、たくさんの花が群れて咲く場面に出くわすと、ついつい見入ってしまいます。少し暗めのスギ林では、ナガバノスミレサイシンとヒカゲスミレの白い花が森に彩りを添えていました。すこしジメジメした場所では、ニョイスミレが小さな白い花をつけています。手入れをした明るい林に入ると、ずんぐりとした白花のケマルバスミレや茜色があざやかなアカネスミレ、甘い香りを漂わせるニオイタチツボスミレが、落ち葉の間から顔をのぞかせていました。約2時間の散策でしたが、7種ものスミレの花を見つけることができました。

日本はスミレの宝庫で、50種ほどがさまざまな環境で暮らしています。湿り気のある沢や乾いた尾根、手入れをした林、スギや常緑樹の生える暗い森など、多様な環境がそろっている高尾100年の森だからこそ、多くのスミレを楽しむことができるのです。

各種の見られる環境と写真

広域

タチツボスミレ

湿った草原

ニョイスミレ(ツボスミレ)

明るい林

ケマルバスミレ
アカネスミレ
ニオイタチツボスミレ

やや暗い林

ナガバノスミレサイシン
ヒカゲスミレ