落ち葉の積もる森で生き物たちの暮らしを見つめよう

森のお便り

2016年 冬

森の木々が葉を落とし、すみきった青空が広がる冬。静まり返った森の中では、全ての生き物たちが眠ってしまったかのように思えます。

しかし目をこらしてみると、森のあちらこちらで生き物たちが暮らす姿を見つけることができます。
冬の森で生き物たちがどうやって暮らしているのか、暖かい格好をして観察に出かけましょう。

大きな葉っぱにまるい穴があいているよ。だれがあけたの?

冬でも青々としたキジョランの葉っぱに、小指の先くらいのまるい穴が空いていました。
葉っぱをめくって裏側を見ると、穴の横には小さなイモムシが!穴をあけた犯人は、どうやらアサギマダラの幼虫のようです。

アサギマダラは1000km以上も旅をすることで有名なチョウですが、幼虫も変わっています。
キジョランは毒がある植物なのですが、アサギマダラの幼虫はその葉っぱを食べても平気。それどころか幼虫は毒を体に取り込み、鳥などの天敵から自分の身を守るのです。
ただし一度にたくさんの毒を食べると不都合があるのか、葉っぱにまるいキズをつけて毒を外へにじみ出させてから、毒が減った傷の内側を食べます。これが葉っぱの穴の正体です。

植物が身を守るために体にたくわえた毒を、逆に動物が利用する。森の中は、冬でもたくましく生きる動植物たちの姿があふれています。

木や草があざやかな実をつけるのはどうして?

かれ葉が散る冬の森でも、森を一周すると意外にたくさんの木や草の実が集まります。赤や黒、青、むらさき、さまざまな色で私たちの目を楽しませてくれます。
どうして植物の実はこんなにあざやかなのでしょう?

冬の森には、ヒヨドリやメジロなど一年中森に住んでいる鳥のほかに、ジョウビタキやシロハラといった冬にだけ見られる鳥も集まってきます。
鳥は植物にとって実の中のタネを運んでくれる大事なパートナー。人と同じく色を見分けることができる鳥たちに、森の中で小さな実を見つけてもらうためには目立つ色をしている方が有利なのです。
また、これらの実の直径はだいたい6~8mmですが、これはちょうど鳥たちが丸飲みできるサイズです。

ほかの場所へ動くことができない植物は、実を遠くに運んでもらうためにいろいろな工夫をしているようです。

アオキの葉っぱがなくなっているよ。どうしたのかな?

林道わきで、くきを残して葉っぱがなくなっているアオキを何株も見つけました。これもアサギマダラのような虫の仕業でしょうか?

じつはこれ、シカの食べあとです。
用心深いシカはなかなか姿を見せてくれませんが、センサーカメラを設置しておくと、立派な角を持ったオスや子どもを連れたメスの姿が何枚も写っていました。
シカは山にいるのでは?と思うかもしれませんが、最近は里で見かけることも多くなっています。高尾100年の森でも少しずつ増えているようです。

しかし、シカが増えてきたと喜んでばかりはいられません。シカが増えすぎたせいで、植物が減って森があれるといった問題が全国で報告されています。

森のバランスがこわれないよう、これからも見守っていきたいと思います。

環境まめ知識 落ち葉の行方

一足すすむごとに「サクサク」と落ち葉が奏でる軽やかな音は、冬の山歩きの楽しみの一つです。
しかし夏には、こんなにたくさんの落ち葉はありません。落ち葉はどこへ消えてしまうのでしょうか?

落ち葉をどけて少し土をほると、きれいな落ち葉の下に細かくなった落ち葉のかけらがあり、さらにその下は粉々の落ち葉が土と混ざり黒っぽい土になっていました。
どうやら落ち葉は土へと姿を変えているようです。

落ち葉が土になるまでには、さまざまな生き物の働きが必要です。
ミミズやダンゴムシは落ち葉を食べてフンをします。そのフンや粉々になった落ち葉にキノコやカビ、び生物などが取りつき、分解されていきます。
やがて落ち葉は土の栄養分となり、再び根から植物に吸収されます。
木と土は落ち葉を通してつながっているんですね。