2022.03.29
  • 事例

世界初「AI活用による不在配送問題の解消」フィールド実証
実験にて、不在配送を約20%削減

株式会社JDSCと佐川急便株式会社、ならびに東京大学大学院 越塚登研究室・田中謙司研究室(以下「東大越塚研究室・田中研究室」)、横須賀市とグリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合は、5者共同で、「AIと電力データを用いた不在配送問題の解消」に取り組んでまいりました。

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取り組む課題

約20%の不在配送

個人向け配送の「不在配送」は全宅配のおよそ2割、2,000億円のコストに相当するとされ、ドライバー不足や労働生産性において物流の課題となっています。

  • 「宅配の再配達の発生による社会的損失の試算について、『不在配達にかかる作業時間』年間約1.8億時間」(国土交通省2015年)より概算
課題1 課題1

在不在が、お届け先に行くまで
分からない。

課題2 課題2

顧客にとっては、再配送となり、
顧客満足度低下につながる。

課題3 課題3

ドライバー不足や、
労働生産性の低下。

取り組み経緯

東京大学内の配送実験結果、
シミュレーションを経て
共同研究

JDSCはAIを用いた電力データ解析・活用技術を保有しており(特許取得)、東大越塚研究室・田中研究室との連携のもと、スマートメーターから得られる電力データを元に、AIが配送ルートを示すシステムを開発。2018年9月~10月に東京大学内で行われた配送実験で、不在配送を9割減少させました。
2019年9月に、このシステムを用い、佐川急便の持つ配送実績データでシミュレーションした結果、不在配送の削減および総配送時間の短縮など一定の効果が確認されたことにより、2019年10月に3者共同研究開発へといたりました。
2020年7月、電力データ活用による不在配送解消の社会実装を見据え、横須賀市とGDBLが参画、5者共同で2020年10月から12月の間に、横須賀市内でBルート(スマートメーターのデータを家庭用HEMS機器等で直接受信する方式)を用いたフィールド実証を行いました。

フィールド実証の概要

スマートメーターの電力データをAIで解析、最適ルートでの配送

電気データをAIで解析

スマートメーターの電気データで、在宅・不在を予測

配送アプリに効率的なルートを
提示

在宅確率が高いと予測される家庭から順に配送

5者共同のフィールド実証

JDSCと佐川急便株式会社、ならびに東大越塚研究室・田中研究室、横須賀市とGDBLの5者共同で行った本実証は、2018年に行われた東京大学キャンパス内での学術目的の配送実験とは異なり、実際の配送会社、配送手段、実際の受け取り手である市民の協力と参画により行われました。
2020年10月~12月に、横須賀市で150世帯の協力を得て、行った本実証の結果、約20%の不在配送の減少を確認することができました。今後、さらなる改善を目指して、準備を進めてまいります。

配送アプリイメージ
学内配送実験結果

2018年9月~10月に東京大学内で行った配送実験で
不在配送を9割削減

東京大学本郷キャンパス内で行った本実験では、予めキャンパス内の各建物に、別途収集した住宅の電力使用データと在宅・不在情報を模擬的に割り振った上で、電力データのみから最適ルートを提示するシステムの性能評価を行ないました。本システムを用いる場合と用いない場合(人が最短経路を判断し配送)で2輪車による配送を繰り返した結果、本システムを用いた場合の配送成功率は98%となり、不在配送は9割削減、総移動距離は5%削減しました。一方で本実験の課題としては、集荷・時間指定・宅配ボックスなどの実際の配送条件がない理想環境に基づくものであり、また配送者も、配送未経験の実験参加者によるものであり、実地環境での検証が課題となっていました。

配送成功率98% 不在配送削減91%
フィールド実証実験結果

【世界初】2020年10月~12月に横須賀市で行った実証実験で
不在率20%改善

不在率改善20%※ドライバーは新人、代走、担当問わず、差分なし

電力データを活用した在宅判定アルゴリズムで、在宅予測・判定を行い、実際に配送を行った結果、不在率を約20%改善できました。その際、その地域の担当ドライバー、代走ドライバー、新人ドライバーなど、さまざまなドライバーで配送を行いましたが、これら不在率の削減効果は、ドライバー間での差は見られず、どのようなドライバーでも同様の結果が出せることが確認できました。
また、この削減幅は、「終日不在であっても、配送拠点に荷物が到着した日には必ず訪問し、不在票を残す」というルールを変えず、現実に則した運用を行っても実現できたものです。
一方で、総走行距離と稼働時間は、「最短距離ルート」ではなく「不在宅を回避したルート」をとる形になるため、増加傾向にありました。
今後の改善点として、走行距離・稼働時間を同等レベルに抑えた形で不在率の削減を目指す予定です。

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