森で楽しめる「○○の秋」とは?

森のお便り

2018年 秋

森で見つけた秋の実り

「○○の秋」 みなさんは何を思いうかべますか。

高尾100年の森を歩くといろいろな秋が見つかります。足元を見ながら歩けば木々が落とした色とりどりの果実に「実りの秋」を感じ、耳をすませば秋風や鳴く虫たちの声音に「芸術の秋」をおぼえる方もいるのでは?

さあ「行楽の秋」です。あなたの秋をさがしに森へ出かけましょう。

秋の実りを食べる生き物たち

森に落ちているコナラのドングリを拾い中身をかじってみると…しぶい!
大量にふくまれるタンニン(お茶のしぶみ成分)のせいで、生ではとても食べられません。タンニンはしぶいだけでなく、たくさん食べるとお腹をこわしてしまいます。

でも森に住むイノシシやネズミ類、ニホンリス、カケス、ゾウムシなどの虫まで、さまざまな動物がドングリをエサにしています。タンニンを多くふくむドングリを、どうして動物たちは食べられるのでしょう?

じつは、タンニンを分解する腸内細菌の働きを借りたり、タンニンの少ないどんぐりを選んだりすることで乗りこえているようです。

「食欲の秋」、森の動物たちは栄養豊富などんぐりを食べるため、さまざまな工夫をしているのですね。

エサをさがして移動するイノシシ
クルミをくわえたニホンリス

管理でよみがえる森の動植物たち「秋の鳴く虫」

暑い夏が終わりをむかえると、秋の鳴く虫たちの声が森にあふれます。森に手を入れ、草原や明るい林が保たれている高尾100年の森は、かれらをまとめて観察できる絶好のポイント。半日で11種もの鳴く虫の仲間に出会えました。

広場の草地では「コロコロコロ」「シリシリシリ」とエンマコオロギやササキリが鳴き、明るい林では「チン、チン、チン」というカネタタキの音がひびき、森の中からは「リッリッリッリッ」とモリオカメコオロギの鳴き声が聞こえてきます。
夏のセミたちとはちがい、はねをこすり合わせて音を出す鳴く虫たちの声はどことなくはかなげで、秋のイメージにぴったりです。

鳴く虫たちが奏でる自然の音色は、「音楽の秋」ならではの森の楽しみです。

(1)草原で見られた生き物

エンマコオロギ
閻魔さまが怒った顔のように見えるためこの名が付いた
コカマキリ
ツヅレサセコオロギ
ツユムシ
ヒシバッタ類
マダラバッタ

(2)林縁で見られた生き物(森林のまわりの部分。森林の深部に比べて光がさし込んでいる)

カネタタキ
「チン」という鳴き声が、仏具の鉦(しょう・かね)を叩いているように聞こえたためこの名が付いた
ササキリ

(3)林内で見られた生き物

モリオカメコオロギ
真正面からみると顔の下が膨らんで「おかめ」にみえるためこの名が付いた
アオフキバッタ
ハヤシウマ

八王子の文化と森の生き物たち「お月見と山野草」編

秋は月がきれいな季節。十五夜や十三夜には、もともと秋の実りを感謝する意味がありました。
八王子ではススキやオミナエシなどの花をかざり、団子や里いも、さつまいも、柿、栗などを月に供えたそうです。
お供えした食べ物は子どもたちが持ち帰ってよかったため、「柿クンナイ、梨クンナイ、なんでもいいからクンナイ」と子どもたちが唱えながら家々を回りおかしをもらった地域もあるとか。なんだかハロウィンのようですね。

かざりに使われるススキやオミナエシは「秋の七草」と呼ばれ親しまれてきましたが、手入れされた草原が里山から姿を消し、ススキ・ハギ・クズ以外の七草は絶滅が心配されています。
高尾100年の森でも秋の草花が多く咲くようになりましたが、七草の再生にはまだ時間がかかりそうです。
「文化の秋」に郷土の風習を楽しむためにも、森の手入れをこれからも続けていきます。

(秋の七草:ハギ、ススキ、クズ、カワラナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウ)

天に向かい穂をのばすススキ

環境まめ知識 台風が森を若返らせる?

記録的な暴風をもたらした台風24号が過ぎ去った後、高尾100年の森の様子を見にいきました。
南からの強風を正面からうける尾根道では、一人では抱えきれない太さのコナラの大木が根こそぎ何本もたおされていました。台風の破壊力をまざまざと感じさせます。

コナラがたおれた場所では周辺の木もまきこまれ、森の中にはぽっかりと10mくらいの穴が開いたようになっています。
こうしてできた森の穴には太陽の光が降りそそぎます。数年前にできた森の穴では、太陽の光を浴びてコナラやその他の若木がぐんぐんと成長しています。
やがて十数年も経つと、森に開いた穴は若い木々たちによってきれいにふさがれてしまうでしょう。

台風は森をこわしてしまいますが、年を取った森が若返るチャンスをくれる存在でもあります。

台風でコナラがたおされ森に開いた穴