雨が降っても高尾の森は面白い!

森のお便り

2017年 夏

雨が降るとせっかくのお出かけも楽しさ半減。そう思っている人が多いのではないでしょうか。
でも雨の日は、普段と違う森の姿を見る絶好のチャンスです。

地表にでてくるミミズを探してサワガニが歩き回っていたり、葉っぱの上にはカタツムリが気持ちよさそうにたたずんでいたり、普段、姿を見せてくれない生き物たちが表に出てきてくれます。

長靴や雨ガッパで雨対策をして、雨の森を楽しみに出かけましょう。

家の屋根にギザギザした模様がついていたよ。誰かのいたずらかな?

森の隣にある家の屋根で見つけたギザギザの跡。これは何でしょうか?

実はこれ、カタツムリの食べ跡です。乾燥に弱いカタツムリにとって、雨の日は絶好のお食事チャンス。
体の下にある口にはヤスリのような歯が付いていて、木や岩などの表面についた藻類をゴシゴシと削って食べます。
首を前後左右に振りつつ前に進みながら食べるので、ギザギザした帯のような食べ跡になるようです。

カタツムリを何匹も見ていると、カラの巻き方が他と違うカタツムリに出会うことがあります。
上の写真のようにカラが中心から外側に向けて時計回りに巻いているのが右巻き、反時計回りだったら左巻きです。
たいていのカタツムリは右巻きですが、運が良ければ左巻きのカタツムリに会えるかもしれません。

カタツムリウォッチングは雨の日にしかできない宝探し。そう思えば、雨の森歩きが楽しくなること間違いなしです。

沢にもいろいろな虫が住んでいるね。田んぼや街の川に住んでいる虫と同じかな?

沢に入ってすこし大きめの石を裏返していると、サワガニやヤゴに混じって小さな虫が何匹か見つかりました。
上の写真の(1)がタニガワカゲロウ、(2)がフタメカワゲラの仲間です。

いずれも水中の石の間で暮らす水生昆虫で、落ち葉や他の動物を食べて大きくなり、羽化した後は沢沿いの森を飛び回ります。
カゲロウやカワゲラの多くはきれいな流れる水に住んでいて、街中の汚れた川や泥のたまった田んぼなどでは見ることができません。
言いかえれば、カゲロウやカワゲラが多い川はきれいな川だ、と言えます。

2016年秋のお便りで紹介したように、高尾の森では木を切って健康な森を守っています。健康な森には水を貯め、きれいにするチカラが備わっているため、森からはいつもきれいな湧き水が沢に流れ込んでいます。

雨は森の土に浸み込み、いずれ沢の生き物たちを育むきれいな水になっていくのですね。

ミズヒキに白い綿が付いているよ。タンポポの綿毛と同じかな?

ミズヒキが道ばたで長い穂を伸ばし、上側が赤く下側が白い小さな花を咲かせていました。
結婚式などで使うご祝儀袋の紅白ひもを「水引」といいますが、これに似ていることが名前の由来と言われています。
その穂を見ていると、花に混じって白い綿毛が付いた穂があることに気がつきました。タンポポのようにタネを飛ばすための綿毛でしょうか?

じっと見ていたら風もないのに綿毛がちょっと動きました。この綿毛に見えるのは「アオバハゴロモ」というセミに近い仲間の昆虫です。
アオバハゴロモの幼虫は白いロウ物質を体にまとい、長く白い毛まで伸ばしていて、とても虫には見えません。天敵の目をあざむくための工夫なのでしょう。

動植物が生き残るために進化させた工夫には、いつも驚かされます。

環境まめ知識 比べてわかる葉の多様性

植物に詳しい人でも、花はわかるけれど葉は地味で覚えていない、という人は多いのではないでしょうか。でも木々の葉を比べてみると、意外と個性的なことがわかります。

大きさを比べると一番右の(1)ホオノキは40cmを超えますが、(9)ヒイラギは4cm程度の小ささです。
形も種類によってさまざまです。(7)イロハモミジは奥まで深い切れ込みがありますが、完全に別々の葉に分かれたのが(2)カラスザンショウや(3)フジなどの葉で「複葉」と呼ばれます。
針葉樹の(20)モミや(21)ヒノキなどは葉が平たくならず、枝の周りを細い葉が覆っています。中には変わった色をした葉もあります。普通、葉の裏側は緑色ですが、(18)ツルグミは金色に光り、(19)シロダモは真っ白です。

このような違いには何か意味があるのでしょうか。

例えば、葉を大きくするほどたくさんの光を受けて盛んに光合成できますが、同時に強い風などを受けて葉が傷付くリスクも高まります。それぞれの種が生きてきた環境に合わせて、一番効率的な葉の大きさや形を進化させてきた結果が、いまの葉の特徴に現れているのかもしれません。

葉のかたちの裏側に隠された意味を知ったとき、花に負けずとも劣らない葉の多様な魅力が見えてくるかもしれません。

  • ※ 写真の葉の種名
    (1)ホオノキ(2)カラスザンショウ(3)フジ(4)ジャケツイバラ(5)イタヤカエデ(6)イロハモミジ(7)モミジイチゴ(8)ダンコウバイ(9)ヒイラギ(10)ガマズミ(11)カツラ(12)ハリギリ(13)ヤマザクラ(14)アオキ(15)ハナイカダ(16)アラカシ(17)ウワミズザクラ(18)ツルグミ(19)シロダモ(20)モミ(21)ヒノキ(22)スギ